球速アップのためにチェックするポイント

テクニック

なぜ投手は球速アップを望むのか?

上記写真はオールドファンならお分かりでしょう!

江夏豊さんです。

田淵さんとバッテリーを組んで王さん、長嶋さんに果敢に挑んだ速球派。

晩年は広島、日ハム、西武と渡り最後はメジャーにも挑戦した大投手。

どんな投手でも球速は上げたいはず。

あと5Km速く、いや3kmでも・・・。

速くなれば現状より相手を抑える確率が上がったり

一段階上位レベルでプレーすることも可能になります。

135kmの投手が140km、140kmの投手が145kmとなれば

プロプレーヤーになれる確率も上がってきます。

私自身は高校1年生のシーズンオフにフォーム改造に着手して

冒頭の写真、江夏豊さんのこの分解写真を見た時にあることに気づいたのです。

「メッチャクチャ後ろ足(軸足)に体重残ってるじゃん」

当時の自分は体重ツッコミ膝が割れて全く腕振れない投げ方だった。

よく監督は懲りずに投手で使い続けたなぁと今でも思う。

187cmの長身から繰り出す125Kmのボー球を

とりあえず投げ込んでみて

相手のバッターが打ち損じてくれたらラッキー!

こんな状態でした。

「もうこれ以上悪くなることはない」

そう言い聞かせてキャッチボールから江夏さんのモノマネ開始。

江夏さんがどんな感覚で投げているのかなぁと想像しながら

写真とにらめっこ。たまたま左投げの写真は右投げの自分にとって

マネしやすかったのです。

この後、身体の使い方が変わったことで

球速が140km前後までアップしました!

球の質が変わったことで投げることが楽しくなってきて

狙って三振バカバカとってました。

春の大会では明らかに別人になり。

不思議なのが、スピード以上にコントロール良くなったんですね。

特にアウトコースの出し入れが目を瞑っても狙ったところに投げられるように

なっていました。

「そんなはずねーだろー」

あるんですよ。コントロールは投げる目標なんか1回見ればOKで

キャッチャーから目を切って感覚で投げていました。

こんな前置きはこの辺りにして

本題に入って行きます!

球速アップの実現は結論から申し上げると

球速が上がるフォームへ変えることで実現します

  

「え〜何言ってんだそれができれば苦労しないよ」そんな声が聞こえてきそうですが。

実際、身長・体重、骨格、関節可動、柔軟性など皆違いますよね。

基本的に投げ方は一人一人違うのです。当たり前

では、球速が出る投手がどのような身体の使い方をしているか分かりやすく整理するために私流に投球フォームを4つに分類し、その特徴を知りパワーロスにつながる要素を改善することで球速をアップさせます。

いきなり、筋力がアップするわけないですからあなたの身体にあった使い方を見つけ球速を上げます。

それでは、前置きはこの辺にして早速始めて行きましょう。

投球フォームを分類する

人間は骨格の違い、柔軟性の違いなどから関節の動き方が人によって異なります。

皆同じ動かし方にはならないので、大きく4つのタイプに分類しました。

この思考は4スタンス理論(廣戸先生)からヒントを得ています。

まずは、下半身の使い方で2タイプ

 Aタイプ (並進運動のスピード速い・くの字ステップ)

 Bタイプ (並進運動のスピード遅い・ストレートステップ

 注)並進運動とは身体を横にスライドさせる動き(サイドステップ)のこと

 

上半身の使いで2タイプ

 

 1タイプ (インバートW :肘抜きと呼ばれるテークバック) 

 2タイプ (スタンダードW:手先か腕全体を身体の側面からフラットに上げる)

1タイプ

masahiro-tanaka-piching

2タイプ

hiroki-kuroda-piching

4タイプそれぞれに素晴らしい選手がいます。

下半身の動きで2タイプ(A/B)、テークバックの動きで2タイプ(1/2)計4タイプです。

各タイプの特徴と代表的な選手

【A1タイプ】       

下半身の動きがキャッチャー方面へ強く速く地面と並行に飛び出して、キャッチャー側の足が右投手はくの字、左投手は逆くの字になり足の裏を打者に向けるような形になります。

上半身はテークバックが肘抜きと言われるインバートWです。

<特徴>  

ボールのキレとコントールを兼ね備える。下半身の並進運動が力強く速いため、その動きに合わせるようにテークバックがコンパクトになっている。

肘を視点に腕の振りが加速するためスピードは出せるが肘に負担がかかる。

日本では速球派の代表格的投法である。股関節の柔軟性、内転筋の強さが必要。

代表的な選手 田中将大、前田健太、千賀滉大、槇原寛己

【A2タイプ】 

下半身の動きがキャッチャー方面へ強く速く地面と並行に飛び出して、キャッチャー側の足が右投手はくの字、左投手は逆くの字になり足の裏を打者に向けるような形になる。

上半身のテークバックは手先または腕全体で身体の側面から両手を広げるように上げる一見アーム式とも捉えられます。

<特徴> 

山本由伸、山岡泰輔に代表される今話題の投手の投法でもあり、テークバックは1タイプの肘に負担がかかるものではなく、一見アーム式のように見えるが肘の負担が少なく大きい筋肉を使って投げれる投法。持久力もあり、スピードも出せる。腕を振るスピードを上げるためには身体全体の強さと柔軟性が要求される。小柄な投手でもスピードが出せる投法である。

代表的な選手 山本由伸、山岡泰輔

【B1タイプ】 

軸足体重キープでヒップファースト、ステップ足は自然着地、グラブ側の肩が高く上がり身体の突っ込みを抑えるスタイル。上半身は肘抜きと言われるインバートW。

<特徴>

大型選手向き。手足の長い投手がテークバックをコンパクトにすることで腕の振りを速くする投げ方。

世界の速球王がこの分類に入ってくる。

代表的な選手  ダルビッシュ、大谷翔平、ノーランライアン、涌井秀章

【B2タイプ】

軸足体重キープでヒップファースト、ステップ足は自然着地、グラブ側の肩が高く上がり身体の突っ込みを抑えるスタイル上半身のテークバックはスタンダードW。手先または腕全体で身体の側面から両手を広げるようにトップ位置へ上げる一見アーム式とも捉えられます。

      

<特徴> 

身体全体の強さが必要な投げ方。肘の負担が少なく故障が少ないオーソドックスな投法。

メジャーでは最も推奨される投法。 

代表的な選手 黒田博樹、桑田真澄、戸郷翔征、バーランダー、リベラ

身体の使い方は意識すれば変えることは可能ですが、そこは身体の動きがスムーズに動き、

パワーを発揮できる使い方を選ぶ必要があります。

まずは、自分の投球フォームを動画で撮影し自分がどのパターンに属するのかチェックしてください。

現状分析からスタートです。

タイプ別の注意点

あなたのタイプは見つかりましたか?

見つかったところで次のステップではそれぞれのタイプが球速アップするために注意しなければならないポイントについて解説致します。すべてのタイプ共通するすることは最後にまとめます。

【A1タイプ】 

体重移動(並進運動)のスピードを上げる=球速アップに繋がります。

プレート板への足の掛け方を間違えるとキャッチャー方向への移動する力が失われて失速してしまいますので下記の図のように軸足の2分の1をプレートに掛けて投球方向へサイドステップする感じで飛び出します。

plate-kick

【A2タイプ】  

下半身の動きが速くテークバックが大きくなる分、腕が振り遅れる可能性があるので手と足のタイミングが崩れないように注意。

【B1タイプ】

インステップ&軸足の股関節が伸びきってしまいパワーロスを起こしやすい。

体重移動の際、軸足の膝が前に折れないように注意。

【B2タイプ】

テークバックが背中の方に入りすぎないように注意。

身体の回転で投げるというよりはテコで投げるイメージ。

脚力(大腿部)の強さと腹背筋の強さが必要。

全タイプに共通すること

ここまででタイプ別に身体の使い方が異なるということと、

ご自身がどのタイプに属するのかが分かったとします。

しかし、現状の使い方がベストとは限らないのです。

そこで、一度違うタイプの動きもキャッチボールで試してみてください。

ここで、今までにない感覚になったり、スムーズな動き、腕が振れるなど変化があれば今度はブルペンで試します。

まだ、球速が120Km台の場合はこの使い方が変わるだけでスピードがアップします。

プロの選手でも入団当初からフォームを変化させてより速く、コントロールも安定したフォームへ進化している選手がいます。

ダルビッシュ投手は入団当初はB2タイプ、現在はB1タイプに変わっています。

テークバックがかなりコンパクトになっていますね。

では、各タイプ共通の事項としては以下の8つの要素となります。

  1. 体重移動時に軸足の膝が折れて前に出ない。
  2. プレート板を正く踏む
  3. テークバックが背中方向へ深く入らない
  4. マウンド傾斜に対応する
  5. 床半力を有効に使う
  6. リリースまで肘が胸より前に出ない
  7. リリースの際両肩のラインと腰のラインが平行になる
  8. 股関節・肩甲骨周辺の柔軟性を保つ

上記①の膝の動き

Clayton Edward Kershaw piching

膝が前に出てしまうと軸足の股関節も前に伸びてしまい身体の開きを招いてしまう。

上記③のテークバックの方向

Clayton Edward Kershaw piching

テークバックが背中側へ深く入るとその分リリースまで引っ張り出してこなければならず、

肘・肩に負担とリリースでのパワーロスに繋がる。

上記④のマウンド傾斜対応

Mariano Rivera piching

高低差25cmがいかに投球を難しくしているか。特に①の肩のラインと②の腰のラインが

足元のマウンド傾斜ラインと相反していることが身体のツッコミを抑えてパワーを蓄積できている状態となります。このトップの位置から切り返しが始まり体重が軸足からステップ足側へ移りながら腕を加速します。

上記⑤の床半力を有効に使うは下記の動画を見てください。

Tyler Glasnow Mechanics | How He Went From 94 to 100+ mph

床半力とは地面を踏み込むことによる反発の力。動画ではステップした足の突っ張りによる腰の切り返しをよく見ていただきたい。

上記⑥のリリースまで肘が胸より前に出ない

Dennis Scott Sarfate

上半身の回転が不足するとリリース位置で両肩のラインより肘が先行してしまう。

どんな投手でも両肩のラインから肘が先行した時点で上半身の回転がストップしてしまいます。

この原因はワイドステップや重心が低くなり腰が落ちた状態になると上半身の回転が不足して

起こります。

上記⑦の両肩と腰のラインが平行になる

egawa-sasaki-piching

上記大投手江川卓さんとスーパールーキー佐々木朗希投手のフォーム

両肩のラインと腰のラインにギャップが見られます。

重心が低く軸足の膝が地面に付きそうです。

この後、床半力を使って切り返すのですが上下動が大きくなります。

kodai-senga

MAX160kmを超える千賀滉大投手です。

このフォームがあるから球速が出るのは納得。

股関節の柔らかさ関節駆動に無駄がなくリリースで腕が加速する

バランスも最高。

ケガのリスクについて

プロの選手の場合結果を出さなければならないので

ある程度のリスクも取りますが、それでも、投球時に痛みを伴うようになれば

選手生命に影響するので休養、治療、リハビリと戦列を離れる決断をしなければなりません。

現在、米国では肘・肩への負担を優先し有効だと分かっていても投げないボールがあります。

その点について、その歴史を振り返って見ましょう。

1986年MLBではマイクスコット投手がサイヤング賞を受賞する活躍を魅せました。

魔球と言われた「スプリットフィンガードファーストボール」

フォークボールよりも浅く挟み軌道はストレート140kmオーバー、手元でストン。

しかし、ボールを中指と人差し指で挟むということは肘に大きな負担がかかり、

マイクスコット投手はその後、怪我が原因で現役生活を終えました。

日本人MLB投手はこのフォークを多投する投手が多く、

その結果、肘の手術を行っています。

この教訓から米国ではボールを挟んで投げることは

選手生命を終わらすことと認識され

現在ではチェンジアップとムービングファースト系の球種が

主流になり、投球フォームも肘抜き(インバートW)投法は少なくなりました。

現在、主流になっているのはバーランダー投手のように

アーム投げ(スタンダードW)が大きい筋肉とマウンド傾斜を有効に使え

肘への負担が少ないく、かつ力のあるボールを投げれるとして推奨されています。

以前は、アーム式、ステップ足の突っ張りなど

日本の球界ではNGとされてきたものが

今では主流となっています。

これは、投球フォームやボールの起動スピン量など

全てデータ化され、そのデータからの分析が進んだからです。

MLBのキャンプではブルペンに多くのカメラが設置されデータを取っています。

そのデータをフォームのチェックや修正に活用しているのは現在の常識。

バッティング技術についても同様にデータ解析され、

今ではフライボールをどのように打つか?

既にセオリーとなってきていますが少し前ではあり得ない方法でした。

日本球界では山本由伸投手や戸郷翔征投手のような

2タイプの投手が結果を出し始めています。

日本人も生活様式や食事の変化から体型が変わり

環境もマウンドが黒土からクレーへ硬くなったり

米国の環境に近くなってきたことから

今後ますます活躍が期待されます。

まとめ

日本人投手が160kmを超えるスピードボールを

投げれるようになったことはMLBでも通用する可能性が増えました。

大谷選手のようにパワーで圧倒できる

日本人も現れたことは本当に楽しみです。

球速をアップするためには「身体の動かし方」が大きなポイント

となることを覚えておいてください。

筋力は正しい動作の上に働く要素となるので

先ずは自分の今を知って、球速アップの要素を取り込み

結果を出してください。

きっと投げることが楽しくなりますから。

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