結論 集中して3時間
野球は他のスポーツと違い練習時間が長いと言われている。事実、1日の練習で投げる・守る・打つ・走る・連携・強化とフルメニューをやろうとすれば早朝から夕方までかかってしまう。
特に、学童・少年野球になれば週末の活動が中心となるためここぞとばかりに詰め込んで、日が暮れるまでグランドにいることになる。
そんなに詰め込んでやって上達するのかと言えば答えはNOだ。
特に身体が出来ていない10代のプレーヤーはスパイクを履いてグランドに立っているだけでも足首・膝・腰への負担が大きい。
更には肘や肩については、キャッチボールから守備練習・投球練習に至るまで投球数は制限しないと成長段階での投球過多は致命的な故障を引き起こす可能性が高まるわけで野球における投球動作は肘・肩の関節を非日常的に動かすためその負担は計り知れない。
速いボールを投げれば投げるほど肘の外旋運動による瞬間的に大きな負荷がかかり腕相撲で強い相手に一気にやられた時のようだ。
指導者自身練習メニューのひとつ一つがどのくらい身体に負荷がかかるのかを計算に入れて、疲労感が残らない程度に練習時間や練習メニューを決める必要がある。
そして、短い時間で集中することを実現するためには予めどんな練習をやるのかをプレーヤーと指導者が共有し、準備段階で練習で使う用具などを用意、配置、メニュー間のアイドリング時間を短縮できるように準備しておく。
これらの時短を実現するためには、練習メニューを前日までに各自に配布。流れをイメージした上で練習に入ることが必要となる。
各メニューが何を目的としているのかを予め理解することで練習への集中度が増して試合と同様の緊張感の中、より実践的な練習をするような雰囲気が出来上がる。
学童野球については、ここまでの精度は必要なく、ゲーム性を持たせた遊びで良い。
遊びの中で基礎体力と柔軟性を維持できるような運動を取り入れておけば十分。
野球の細かいプレーなど高度な野球を教えて実践しているチームもありますが、
小学生や中学生がやらなければならないことは丈夫な身体を作ること。
試合で勝つことを意識するあまり本来の目的を見失わないように指導者の皆様にはやらない勇気を持って欲しいです。
勝利至上主義からのハードワークはNG?
指導者の皆さんは保護者やOBなどチーム関係者から大なり小なりプレッシャーをかけられることがあるのではないかと想像します。
保護者の中には「子供が楽しくプレーできれば良いです。」「勝てなくても次頑張れば・・・」などと表向きはソフトな発言をしている人でも本心は違います。自分の子供が一番であるのは当たりで、大人の立ち振る舞いができるかできないか。
「勝てないのは指導者が悪いのでは?」などと直球で言ってくる人はまだ良いが、陰でコソコソやられると指導にも集中できなくなりチーム内もギクシャクしてきます。
チームの事情にもよりますが、勝たせようとすればあれもこれもやらなければならないとなり、結果勝てない言い訳を練習の多さでごまかすことになるのです。「これだけ練習しているのだから負けても仕方ない」と逃げ道を作る。
この時点で選手たちは大人の都合で振り回され、余計な負担を強いられることになるわけです。
先日、私が野球人として尊敬している読売ジャイアンツのコーチである桑田真澄さんが片岡さんのYouTubeチャンネルに出演している動画の中で仰られていたのですが、高校野球までは長時間練習によるハードワークは必要ないと。しかし、20歳を超え身体が出来上がってきたらとことんハードワークをせよと。あのKKコンビの高校時代(1984年〜1986年)に名門PL学園野球部の練習を変えさせた男は凄い。
分かってはいるのですが、いざ実際チームを預かる立場ではやらない勇気をなかなか持てないし、
その上結果が出なければ保身に走る指導者もいるだろう。
こうして長い間、無駄な練習を繰り返して選手の大切な時間と健康を害してきたことを本気で認め次世代の選手を育成するために指導者のエゴは捨てて欲しい。
そして、どうしたら短時間の内容の濃い練習ができるか、あなたのチームの指導者で話し合ってみてください。
ちなみに大阪の堺ビッグボーイズ阪長さんの書籍やVoicyを参考にしてみてください。
阪長さんは、ドミニカを始め諸外国で野球指導にあたられた方、ご自身も立教大学でキャプテンを務めた実績のある方です。
高校野球までは身体の負担を考えよう
前項の最後に桑田真澄さんの談話を紹介しましたが、もう少し深堀してみたいと思う。
高校生でも甲子園の常連校となれば身体も大きくかなり出来上がっているように見えます。
実際、ウェイトトレーニングや食事など身体を大きくすることは高校野球の現場でもかなり浸透しており、プロ選手と遜色ないような立派な身体を持っている選手もいます。
しかし、そんな高校野球のトップ選手が高卒でプロ野球選手となれたとしても先輩選手の身体の強さとスピードに圧倒されるのです。一言で言えば質が違うのです。
高校を卒業する18歳位ではまだ身長も伸びきっていない選手もいるのではないでしょうか?そして、骨や関節周辺の筋肉なども十分に発達していない状態(個人差はありますが)にあります。
そんな、成長途上の選手がトーナメント方式の過酷な大会スケジュールをこなさなければならない環境下ではどうしても、耐えうる身体を作らなければならないとなりハードワークすることになります。
話がそれますが、お笑い芸人ティモンディの二人が済美高校時代の練習をネタにしていますが、当時は真剣に夏の大会に向けてグランドコートを着込み、タイヤを引いた状態でノックを受けたり、投手は室内練習場の窓を締め切り炭火を炊いてサウナ状態でのピッチング練習を行なっていたという話し。
そりゃ、35°C以上の炎天下で2時間以上試合をする訳ですからそれなりにトーニングしていなければグランドで倒れますよね。
ここに、落とし穴があると思うんですよ。ハードワークが正当化されその結果選手は身体のリカバリーができないうちに次から次にゲームや練習を続け、疲れた状態でフォームを崩し致命的な故障を引き起こしてしまうのです。自らの判断でハードワークするのであればまだ良いが、与えられたプログラムでは疲労度は全く異なると思います。
確かに苦しい練習に耐えたことで精神面が強くなることはありまが、そもそも、身体がついてこなければパフォーマンスは落ちます。
高校野球の公式戦は一発勝負のトーナメント。
このトーナメント方式がそもそも弊害であり、勝利至上になりやすい環境を形成している。
大会では特定の選手への負担が大きく、控えの選手も出場機会が減る傾向。
この課題はリーグ戦方式を採用すれば解決可能であるが、やはり甲子園という巨大なシンボルが
あまりにも大きな存在になり過ぎたということ。
そろそろ、高校野球は甲子園大会を見直す時期に来ているのではないだろうか。
新聞社主催、国営放送による全国中継があるために選手も勘違いしてしまう。
指導者の皆様には、選手の身体と心の成長を最優先し長くプレーを続けれるよう環境や取り組みを変えることに挑戦していただきたいと願うばかりである。
身体が出来てからはハードワークOK
20歳を超えてプレー環境もレベルが高くなった時には、いよいよ成果を出すためにギアを上げて欲しい。
このレベルからは闇雲にハードトレーニングすれば良いわけではなく、常に科学的なデータやエビデンスを有効に使っての取組に効果がある。
昨今、スポーツの世界は高速カメラの発達により動作の解析技術や多くのデータを集積することが可能となり過去の経験や感覚に頼る指摘や指導から映像・データをベースに自身の課題や目標の設定が可能となってきています。後は必要なトレーニングを局所的に行うことでパフォーマンスがアップします。
トレーニングについては人それぞれ身体の特徴があり、筋力の強弱も全く異なるためトレナーと
相談してメニューをカスタマイズして欲しい。
ここまでできれば後は課題を克服するために反復の練習が必要なものはやらなければならないし、
筋力の強化が必要であればそれなりのトレーニングを行う必要がある。
ただ、チーム全体で決めたトレーニングを行うだけでなく、あくまでも自分を知り、必要なトレーニングを行うことが重要である。
このようなプロセスは野球に限ったことではなく、どの競技で行われています。むしろ野球は導入が遅れている。
ハードワークとはただ量をこなすことではなく、現状把握➡︎課題設定➡︎修正➡︎検証➡︎修正➡︎検証と続けて行くことだと定義したい。身体を動かすことだけではなく、専門的な知識の勉強や思考などを含めて総合的に行うことが必要である。
まとめ
学童野球や少年野球などは週末主導の活動となっているため、あれもこれもやりたくなってしまうのもよくわかります。
しかし、選手の身体の成長を観てください。1年間で身長が10cm近くも伸びるような時期に骨や関節に負荷をかけたらどうなりますか?
柔らかいできたての骨を何度もすり減らすように動かしたら何かしらの異常は起こります。よく、少年野球(中学生)では腰を痛める(腰椎分離)や膝(オスグッド)が痛いなど、肘・肩に痛みを感じることが少なくありません。
このような成長著しい時期に長時間練習は必要なのでしょうか?
野球の場合、選手のピークは25歳あたりだと米国や中南米では定義されている。10代でトレーニングをやり込んだとして、どれほどの成果に繋がるのか疑問である。
むしろ、練習だけなら3時間で終えられるように練習内容の事前周知とよくありがちなシートノックなど効率の悪い練習を省いて欲しい。仮に人数が多ければ時間の割にボールを扱う機会が少なくなります。であるならノーカーを増やして数カ所でボールの捕球及びネットへのスローイングなど行えば時間が短くてもそれなりに多くの機会を得られることになります。
指導者や保護者の皆様もそろそろ変わらなくてはならないと気付いているはずです。
今、そう思うのであれば今が変える時期だと思いますので大人が知恵を絞り、野球を知らない人でも子供にさせたいなと思ってもらうようなスタイルを築いていって欲しいです。
野球は古いスポーツのように思われがちですが、大谷翔平選手のように素晴らしいプレーヤーが
日本球界から育っています。
実力だけでなく、人としても素晴らしい人ですよね。
野球という競技を通して多くの学びを得て素晴らしい人生を歩めるきっかけとなることを切に願っております。
追伸:学童野球のチーム運営について保護者の方のTwitterなど拝見すると配車の問題や指導者との関係、保護者同士の関係などで問題を抱えているケースが多い様です。
是非、古い必要のない慣習を捨てて皆様が良いと思うやり方へ変えてみてください。
もし、上手くいかなければ元に戻せば良いですから。