関節可動が球速アップに必要なわけ
前回の記事でフォームを4つのタイプ(A1・A2・B1・B2)分類してタイプごとにロスをなくし球速を上げることを解説しました。
少々ざっくりな説明であったため、ここからは掘り下げてより詳しくお伝えして行きます。
そもそも、球速が速い人とそうでない人の差はどこにあるのだろう?
そして、上記写真はサファテ投手。リリース後の利き手の指先が曲がっています。
このようにボールを押さえ込むような投球に変えなければ全部高めに抜けるボールになってしまう。
身体の大きさだろうか?それとも筋力の差だろうか?
それ以前に関節の動きがパフォーマンスに大きな影響を与えることは間違いないのですが
関節自体は関節の前後にある筋肉の収縮によっては動きます。
この記事では下半身の関節可動が球速アップの原点であることに着目しその動きが正しく強く動かせる
状態についてその仕組みを理解し球速アップを実現して欲しいという具体的に取り組みに繋がるように解説致します。
まず、球速アップの要因の一つ「体重移動」について考察します。
投球動作は簡単に言えば体重移動であり軸足に乗せた体重を軸足の股関節、膝、足首を使ってA地点からB地点へ加速しながら移動する。
この体重移動を並進運動と呼ばれ、「サイドステップ」と言えばイメージしやすいのではないでしょうか。
軸足でプレート板を押すようなイメーで一気にキャッチャー方向へスライドする動き。
プロとアマの投球フォームを横から見比べると明らかに異なる点がこの並進運動のスピードであることに気が付きました。
球速アップに最も重要な関節は?
並進運動のスピードと正しい方向への動きがスピードに直結することが重要であることは分かったがではどうしたらこの力強く安定した動きができるようになるのか?
結論から申し上げると軸足の股関節が最も重要で、その次に軸足の膝、足首となります。股関節の重要性については以下の通り
①骨盤の開きを抑える
②身体を正しい方向へ動かす
③上半身と下半身の捻転差を生み出す
まず、上記①は膝や足首の状態から連動します。
プレート板に正しく足をかけているか。
この時点でかかとが正しい位置にないとその後の骨盤の開きに繋がりインステップになる。軸足の膝が前へ折れすぎないこと。膝が出ると股関節が入らなくなる。
軸足の膝が前に折れすぎないことにより
股関節が入った状態(骨盤が閉じている状態)をキープしながらキャッチャー方向へスライドする。
この時、上半身は置いてきボリにして下半身が先行して動きます。
ここで上半身と下半身のギャップが生まれてパワーを溜め込み、その後リリースへ向けて解き放つイメージこの一連の動作は右投手の場合、ウエイトが右股関節から左股関節へ移動することになりますのでここがスムーズにできなければ後は腕でどうにか調整するしかなくなります。
肘や肩に負荷がかかり故障する原因もこの下半身の動きが正しく行われれないことによって
原因を作りますのでいかに股関節の動きが大切かを理解してください。
下の図は骨盤の動きをイメージしたものです。
上記⭐️の部分は骨盤の左側がステップの着地によりロックすることで右側がキャッチャー方面に動く。
上記イメージでみると振り子のように動く物体の軸の中心あたりを止めることで先端部分は加速する。
投球動作も軸足に乗った体重が並進運動によって移動しステップが着地することで左腰がロックされ右腰が投球方向へ加速する。
関節可動の不具合がパフォーマンス低下を招く
ここまで、関節の中で股関節が球速アップに重要であるとを説明してきました。
股関節だけではなく肘や肩などの関節も重要であることは言うまでもないですが、関節可動に悪影響を及ぼす要因は何か?
関節は骨と骨が直接くっついていません。
どの関節も360°自由に動くわけではありません。
靭帯や筋肉によって保護されています。
特に筋肉の収縮によって可動域が変わりますので筋肉疲労も関節可動に大きく影響を及ぼします。
筋肉痛になった時は当然動き悪くなりますよね。
関節可動が狭い状態で投げることは何処かに不要な負荷がかかることになります。
先発投手の中4日・5日と言うのは緊張状態で100球近くを投げ続けるため当然、回復の時間が必要となります。
プロ野球選手なら投げられないわけではないのですが、長いシーズンを一定のパフォーマンスをし続けることはいかに筋肉に疲労を蓄積させないこと。
筋肉が凝り固まった状態での可動はフォームを崩しパフォーマンスを低下させます。
このあたりはコンディショニングの領域になるため改めて解説することにします。
筋力アップの前に関節の動きを整えよう!
球速アップ=筋力アップという単純な発想に至ってしまうこともあるでしょう。
しかし、身体と道具を使うスポーツは筋力がアップすることは正しいフォームになった延長線上で考えれば良いことで更に深堀するなら、不用意な筋力アップはマイナス要因になってしまいます。
え~そんなはずないだろ~と思ったあなたは要注意。
手先に持ったボールのリリースで最大の力を加える場所は指先の僅かなボールとの接地面です。
指先から肩にかけては筋肉が発達して重量が増すとそれだけ加速させるためにボディに力が必要となります。
足の速い選手を例にしてみると、足首やふくらはぎなど足の先端にかけて細くなっています。
これら投手の体型を見てみても筋肉が大きく発達している選手はあまり多くありませんね。
逆に細マッチョ系の体型に速球派が多いと思います。
投手の場合投球時に肘が外旋してトルクがかかります。
もし、腕の筋肉が肥大して容量が増えた場合は更にトルクが大きくなりますね。
靭帯などは鍛えられないので負荷が大きくなれば耐えられなくなります。
ここがバランスでイチロー選手のように細身の体型でありながら腕や足の動きがシャープなのは変わらぬ体型であったからこそと。
まとめ
投手が球速アップを臨むことは当たり前です。
どうしたら球速が上がるか?
私自身も股関節のポジションが悪く完全に「開き」現象に陥っていました。
身体が大きくてもこの状態なら力が発揮されることはなく、
どんなに頑張っても球速は上がりませんでした。
余計な筋力アップは投手にとっては可動域を狭めてしまい故障につながります。
関節の可動は筋肉の収縮によって行われるため余計な力が加わらなければスムーズに動かせるでしょう。
まず最初に取り組んで欲しいのは投球動作で無駄な動きがないかどうか?
筋力アップは時間がかかりますが、動作のチェックや改善は1日でもできます。
無駄な動きを減らす=正しい動作 まずは投球動作を動画で撮影し下半身の動きを調べてください。僅かな違いで球速や制球が変わりますから。
何回も言いますが野球の上達は身体の使い方ですよ。
今後の野球界は動作解析技術が進み、投げるボールの回転軸の角度、スピン量などのデータを取得し限りなく理想の数値に近づけるというプロセスが当たり前になるでしょう。