ピッチトンネルとは?
投手がピッチトンネルとういう概念を理解することで打者に打たれなくなる。
こう言われたら「何?」となるでしょう。
投球そのものがあらゆる技術を使った機器により数値化や可視化されることで格段にレベルアップへの道が早くなりました。
そんな時代に出て来た「ピッチトンネル」という理論。過去からもその理屈は語られることはあったものの、1つの言葉で理論としてまとめられ、実践に取り入れ結果を出している投手が増えていることから高校生以上の投手は知っていて欲しい知識である。
では、結論から申し上げるとピッチトンネルとは?
図で説明すると以下のとおりです。
上記の図がピッチトンネルのイメージです。
AのトンネルとBのトンネルの大きさに誤差(よりAが小さく)があればあるほど打者の対応が難しくなるということです。
簡単に言うと、いかに打者の手元で変化させるか?
理屈は簡単ですが、いざ、実践するとなると難しいかもしれませんね。
MLBサイ・ヤング賞受賞投手のトレバー・バウアーがピッチトンネルについて解説している動画がありますので
日本語の字幕付きですので是非、視聴して見てください。
ピッチトンネルと変化球
ピッチトンネル理論で対象となる球種はスライダー、カットボール、ツーシーム、スプリット、チェンジアップ。
カーブについては、投げる人によって軌道や球速が異なるため、手首を使って抜くような曲がりの大きい球質ならトンネルを通過させることは難しく、ナックルカーブや親指で弾く高速系カーブが投げられるのであればよりトンネル付近を通過させることが可能となります。
ピッチトンネル理論が広まって来た背景には「ラプソード」という投球計測機が使われるようになったことが大きいです。
自分の投げるボールの球速、回転、回転軸、軌道など計測できるラプソードは多くの優秀な投手の投球データを数値化したことによりその、優秀な投手が投げる変化球データに近づけることで同じスライダーでも打たれないスライダーを再現することが可能になりました。
ダルビッシュ投手が自宅のブルペンでラプソードを使った投球練習をご自身が動画で解説していますので是非、こちらも視聴してみてください。
ピッチトンネルを実践で活かすには?
まず、取り組まなければならないのは、自分の投げている球種の軌道を理解することです。
打者方向からの動画を収録し、リリースのポイントと軌道を確認します。
リリースは打者が最初に球種を判断するポイントであるため一定に保つよう意識する。
4シーム・スライダー・カット・2シーム・スプリットをできるだけトンネルを通すイメージが必要なので大きく変化させようとせず、最初は小さな変化から練習を積んで行きます。
ここで回転軸とスピン量がボールの軌道に大きく影響することを理解して欲しい。
まず、下記のケースでは投手側から見た場合に回転軸は地面と平行である。
真上から見た場合の軸の右側が少し前に出ているならばジャイロ回転が入っていることになります。
ジャイロ回転については
ぱーぽんさんのnoteに詳しく記述されていますので紹介致します。
https://note.com/bourbontech429/n/n8bd2abd09712<
ざっくり説明すると以下の違いがあります。
True Spin バックスピン・トップスピン・サイドスピン
・初速と終速の差が開き、終速が遅くなる。
Gyro Spin ジャイロスピン
・空気の抵抗が少なくなりボールは落下する。
・初速と終速の差が小さくなる。
これら回転軸を可視化できるのは、スパースローの動画かラプソードなどの計測器になりますがいずれも高価なため、ボールの半分をカラーリングして回転が良く見えるように細工したボールを使うことでどんな回転になっているかはある程度判別はできるのでやってみてください。
先程の回転軸によるボールの軌道が変わることと、もう一つ前提となる要素をお伝え致します。
投手が投げるボールには角度がついているということも理解して組み立ててください。
最低でも下記の図のように腕の長さ分リリース位置は身体の中心軸より外側(70cm~80cm)にあり更にはプレート板のどこを踏むかや投げるコースによってはかなりの角度が付いてきます。
以上の要素を理解した上で自分が投げるボールの球種の軌道を作り上げ、実践では打者にいかにスイングさせミスショットをさせるか。または、空振り、見逃しを起こさせるか。
あなたの投球の精度が上がり結果が出せるようになることを期待しています。
まとめ
近年、Drive Line Baseballが注目を浴びています。
米国、シアトルにあるトレーニング施設でMLBプレーヤーをはじめ、日本のプロ野球選手もシーズンオフにスタッフを招聘して解析とトレーニングを実施しています。
野球におけるあらゆる解析が進み、そして、各種データの積み上げにより分かってきたことが多くあります。
それらのデータを活用するか、今までのように感覚で行うかは個人の判断となりますが、少なくとも打者を抑えるにはどうしたら良いか?
投手は球速を上げることや、変化球を身につけることが目的ではなく、打者を抑えること、得点を与えないこと、最後はチームが勝利することが目標となります。
そのためには、貪欲に研究と実践を重ねて行くことが求められるのではないでしょうか。自分はこうだった、昔はこうだったなど、説得力のないことは言わず、指導者の皆さんには、野球を教えるにあたり常に研究者であって欲しい。
少しでもプレイヤーの未来が開かれるようになるためにこのピッチトンネルの理論も役立ててほしいです。
私がアマチュア野球の指導者へ資格を回復するために受講した講習の講師であった筑波大学の川村先生の著書を紹介致します。
現ソフトバンクの工藤監督、千葉ロッテの吉井投手コーチなど川村先生の講義を学んだ元プロOBも多く野球を科学的に研究されております。