MLB仕様のクレーマウンドへ
私が過去、プロ野球(NPB)投手、米国マイナーリグでのプレー経験、更にはプロ野球場での実務経験から球場のマウンドについて解説致します。
投手にとってマウンドの状況は投球に直結するため現状どのような仕様になっているか理解することが必要です。
そして、よりハイクラスでのプレーが想定されるなら、リーグ公式戦で仕様する球場のマウンドがどのような特徴を持っているのかを予め知っておく必要があります。
更にはマウンドの特性に合わせ、投球フォームを変えることも必要となることを提言します。
結論から申し上げるとプロ野球で仕様する球場のマウンドはMLBで多くのスタジアムで採用されているブラックスティックマウンドクレイ®(東洋グリーン株式会社)などに変わっております。
東洋グリーン株式会社
従来、日本の球場はマウンドの土が柔らかくプレート板前や踏み込み足の着地位置が大きく掘れてしまい後から投げる選手はとてつもなく投げにくい条件となっていました。
近年、MLB公式戦、ワールドベースボールクラッシック、オリンピックなど行われる際に米国基準の採用が必須となったことや雨天時、日常のメンテナンスが楽なこと、更には日本人MLBプレーヤーがNPBへ復帰するなどの要因から採用が進んできています。
クレーマウンドの特徴
では、MLB仕様のクレーマウンドにはどんな特徴があるか?
大きな特徴の一つに「固さ」があげられます。
大きな身体の投手が体重移動でもの凄い力が加わったとしても表面が変形しないほどの固さ。
この固さは投手の分業性となった現在、リリーファーにとってもマウンド状態が変わらないことで安心して投げることができます。
また、ドーム球場でない場合は雨天時にスパイクの裏に土がつきやすく投げずらくなります。
よく鉄の棒などで叩いているシーンのあれです。
そのほか、技術的な視点で見れば固さによる地面半力を使えるということ。
傾斜も影響しますがパワーピッチャー向きであることも言えるのではないでしょうか。
クレーによってどんな影響が考えられるか?
従来、日本人の投球フォームはマウンドの土が柔らかいこともあって、
歩幅の広い膝がつくほどの低重心フォームになっている投手が多かった。
しかし、近年はそのようなフォームではなく固い傾斜のあるクレイマウンドに対応するため歩幅が狭くなり、ステップした前足がピ~ン!と伸びきるようなフォームになって来ています。
投手からすると柔らかいマウンドはディポットが深くなるため非常に投げにくくなっていました。
クレーになることで足場の安定から投手のパフォーマンスが上がり、また、メンテナンスも簡単になるため一石二鳥です。
しかし、日本人MLBプレーヤーを見るとその多くはトミー・ジョン手術を行なっています。
固く、傾斜のきついマウンドで、しかも使用球が違うMLBでは、どうしても肘、肩に負荷がかかるため
故障する選手が増えることは想定できます。
まとめ
日本のプロ野球球場のマウンドがクレー素材の使用から固く、傾斜がきついのが標準となります。
今後、地方球場などは順次、導入が進むでしょう。
結果、マウンドが固く、傾斜がきつくなることで投手がこのマウンドを利用してパフォーマンスを発揮するためには、投球フォームをマウンドに合わせる必要が出てくる。
当然、重心は高くなりステップした前足が体重を受け止め、地面の半力を使うだけの脚力が必要になります。
このようなプレー環境の変化に順応することが良いプレイヤーの資質となっていくでしょう。
現状でも、マウンドの傾斜などは球場によって異なりますがこれは、ドーム球場と屋外球場で大きく違い、どのような違いかというとドーム球場は雨が降らないため、グランドに雨天用の勾配が付けれていない。
つまり、平ということになります。そこにマウンドですから高さは約25cmですが、高さを感じることになります。
屋外球場の場合は、雨天用の勾配が付けられておりグランド中心部(セカンドベース後方)から雨水がたまらないようにスタンドに向かって勾配がついています。
ちなみに、私が所属していた西武ドームは最高位置から最低位置で60cmの差がありました。
ドーム球場なのに勾配があるのは西武ドームだけですね。開場当時は屋根がなかったからです。
今回はマウンドについて解説致しましたが、人工芝やビジョン、特別シートなどその他球場の装備についても順次お伝えしていきます。